ラベルさん先に結論です。塩の袋には原材料名とは別に「工程」という欄があり、そこに書ける言葉は17語に決められています。イオン膜、逆浸透膜、溶解、天日、平釜、立釜、採掘、焼成といった言葉です。
そして、この欄を業界団体の登録商品974件ぶん引き写して突き合わせたところ、原材料名に「天日塩」または「天日海塩」と書いていた129件のうち、工程欄に「天日」が出てきた商品は1件もありませんでした。理由は規約の条文にあります。数字はすべて2026年9月4日に食用塩公正取引協議会と各社の公式サイトで確認しました。
「塩は体に悪い」で調べられているのは、味ではなく作り方

銘柄の名前と「体に悪い」を並べて検索する人が多い食品は、そう多くありません。塩はその少ない一つです。ぬちまーす、雪塩、伯方の塩、藻塩、南の極み、ピンクソルト。どれも銘柄名がそのまま検索の言葉になっています。
気にされているのは味ではなく、どうやって作られたかです。海の水をそのまま煮たのか、機械で濃くしたのか、海外から運んだ塩を溶かし直したのか。この違いが体にどう関わるのかという話は、この記事では扱いません。この記事が出すのは、袋に何と書かれているかだけです。
ありがたいことに、塩は作り方が袋に書いてあります。しかも書き方まで決められています。決めているのは食用塩公正取引協議会で、根拠は「食用塩の表示に関する公正競争規約」です。協議会は規約の概要のページで、原材料と製造工程を書くことが義務づけられていると説明し、他の食品にはない、塩独特の表示だと述べています。
つまり、うわさの中身は袋の裏で答え合わせができます。まずその欄がどんな欄なのかを見ていきます。
塩の袋にある「工程」欄は、使える言葉が17語に決まっている

塩の袋の一括表示は、上と下に分かれています。上の段が名称・原材料名・添加物・原料原産地名・内容量・原産国名・製造者。ここまではほかの食品と同じです。塩だけにあるのが、その下の「製造方法」という枠で、中身は「原材料名」と「工程」の2行です。
工程の欄に書ける17語
規約第3条第3項第3号は、最終製品の製造工程の特性について、その順序に従い、用語を列挙して表示すると定めています。その用語は施行規則の表で決められていて、次の17語です。
| 用語 | 規約が書いている工程の内容 |
|---|---|
| イオン膜 | イオン膜を利用して海水を濃縮する |
| 逆浸透膜 | 逆浸透膜を利用して海水を濃縮する |
| 浸漬 | 海藻等を塩水に浸漬しその成分を抽出する |
| 溶解 | 天日塩、岩塩等の結晶化した塩を溶解して塩水を得る |
| 天日 | 塩田、流下盤、枝条架、ネット等を用い、主に太陽熱又は風力で水分を蒸発させる |
| 平釜 | 密閉されていない釜を用い、大気圧で加熱蒸発させる |
| 立釜 | 完全密閉型蒸発缶を用い、減圧又は加圧状態で加熱蒸発させる |
| 噴霧乾燥 | 海水又は塩水を噴霧乾燥し、その液滴を濃縮又は結晶化する |
| 加熱ドラム | 海水又は塩水を加熱ドラムに接触させて結晶化する |
| 採掘 | 結晶化した岩塩又は湖塩を掘り出し又は採取する |
| 乾燥 | 装置を用いて人為的に塩の結晶の水分を蒸発させる |
| 粉砕 | 塩の結晶を粉砕して粒径を小さくする |
| 焼成 | 塩の結晶を高温になるまで加熱し、成分の一部又は全部を変化させる |
| 混合 | 添加物を加え、又は他の塩を更に混合する |
| 洗浄 | 淡水又は塩水で結晶表面の異物、不純物等を洗浄除去する |
| 造粒 | 塩の結晶を加圧又は添加物を加えて成形する |
| くん煙 | 煙を当てて風味付けをする |
出典は食用塩の表示に関する公正競争規約施行規則第3条です。焼成には但し書きがあり、380℃以上なら「高温焼成」、380℃未満なら「低温焼成」と書き分けられます。表にない工程が出てきたときは、協議会の承認を得て別の言葉を使えることになっています。
原材料名の欄に書ける言葉は5つ
もう1行の原材料名も、書ける言葉が決まっています。塩化ナトリウムを含む原材料は海水・海塩・岩塩・湖塩・温泉水の5つのいずれかで書くこと、というのが規約第3条第1項第2号です。太陽熱で結晶にしたものなら頭に「天日」を付けられ、海塩は「天日塩」と短く書いてよい、という但し書きが続きます。
ここを読み違えやすくなります。「天日」という言葉が出てくるのは、原材料名と工程の両方です。同じ言葉が2か所に出るせいで、読み違いが起きます。
13商品の原材料名と工程を、そのまま引き写した

並べ方は原材料名の順です。海水から作った塩、天日塩を原料にした塩、岩塩、の3グループに分け、優劣の順位は付けていません。味も判断に入れていません。数字と言葉は協議会の登録商品ページと各社の公式サイトから、そのまま引き写しています。
| 商品(会社) | 原材料名 | 工程 | 語数 |
|---|---|---|---|
| 沖縄の海塩ぬちまーす 250g(ぬちまーす) | 海水(沖縄県・宮城島) | 逆浸透膜、噴霧乾燥、低温焼成 | 3 |
| 宮古島の雪塩 120g(パラダイスプラン) | 海水(日本・宮古島100%) | 逆浸透膜、加熱ドラム | 2 |
| 海人の藻塩 100g(蒲刈物産) | 海水(瀬戸内海)海藻 | 逆浸透膜、立釜、浸漬、平釜、焼成 | 5 |
| 瀬戸のほんじお 1kg(味の素) | 海水(岡山) | イオン膜、立釜 | 2 |
| 南の極み ボトル 500g(チータム・ソルト・ジャパン) | 海水(100%オーストラリア) | 天日、洗浄、乾燥、粉砕 | 4 |
| ゲランドの塩 あら塩 1kg(アクアメール) | 海水(フランス) | 天日 | 1 |
| 伯方の塩 1kg(伯方塩業) | 天日海塩(93%メキシコまたはオーストラリア)海水(7%日本) | 溶解、立釜 | 2 |
| 沖縄の塩シママース 1kg(青い海) | 天日塩(89.3%メキシコまたはオーストラリア)海水(10.7%沖縄) | 溶解、平釜 | 2 |
| 赤穂の天塩 700g(赤穂化成) | 天日塩(オーストラリア)粗製海水塩化マグネシウム(にがり) | 洗浄、粉砕-溶解、立釜 | 4 |
| 食卓塩 100g(塩事業センター) | 天日塩(メキシコ)/炭酸マグネシウム | 溶解、立釜、乾燥、混合 | 4 |
| 精製塩 1kg(塩事業センター) | 天日塩(メキシコ)/炭酸マグネシウム | 溶解、立釜、乾燥、混合 | 4 |
| ヒマラヤピンク岩塩 500g(白松) | 岩塩(パキスタン) | 採掘、洗浄、粉砕 | 3 |
| ピンクソルト 160g(ジャパンソルト) | 岩塩(パキスタン) | 採掘、洗浄、粉砕 | 3 |

出典は協議会の登録商品ページのうちぬちまーす、蒲刈物産、味の素、チータム・ソルト・ジャパン、アクアメール、伯方塩業、青い海、赤穂化成、塩事業センター、白松、ジャパンソルトの各ページです。雪塩だけは協議会の登録商品に見当たらなかったため、パラダイスプランの公式サイトに載っている表示を使いました。工程は「逆浸透膜、加熱ドラム」と書かれています。
13商品のうち、原材料名に添加物が書かれていたのは食卓塩・精製塩・赤穂の天塩の3商品でした。食卓塩と精製塩は炭酸マグネシウム、赤穂の天塩は粗製海水塩化マグネシウム、いわゆるにがりです。にがりを添加物として書くときは「粗製海水塩化マグネシウム(にがり)」と書いてよい、と施行規則第2条に定めがあります。残る10商品の原材料名には、添加物にあたる表示が出ていませんでした。ただし加工助剤とキャリーオーバーには表示の免除があるので、これは「袋に書かれていない」という意味にとどまります。
塩事業センターは食卓塩の商品ページで、この4語を平たい言葉に置き換えて説明しています。メキシコ産の天日塩を水に溶かして濃い塩水にし、密閉した釜で煮詰めて結晶を取り出し、乾かして、炭酸マグネシウムを混ぜた。工程欄はこれを4語に縮めたものだ、という説明です。
原材料名が「天日塩」の商品に、工程の「天日」は出てこない

表を見比べると、はっきりした共通点が1つあります。原材料名に「天日塩」「天日海塩」と書いてある伯方の塩・シママース・赤穂の天塩・食卓塩・精製塩の5商品は、どれも工程欄に「天日」がありません。始まりは「溶解」か「洗浄」です。
逆に工程欄に「天日」があったゲランドの塩と南の極みは、原材料名が「海水」でした。言葉が入れ替わっています。
974件を突き合わせても、例外は0件だった
13商品だけの偶然かを確かめるために、協議会の登録商品ページに並んでいる974件の製造方法欄をすべて引き写して照合しました。結果はこうです。
- 原材料名に「天日塩」または「天日海塩」と書いていた商品:129件
- そのうち工程欄に「天日」が出てきた商品:0件
- 129件の工程欄で最も多かった書き方:「溶解、平釜」の30件
例外なしです。129件の内訳を見ると、溶解、平釜、焼成が12件、溶解、立釜、焼成が9件と続きます。どれも溶解か洗浄から始まっています。
理由は「工程欄が最終製品の欄だから」
答えは条文に書かれています。規約第3条第3項第3号が求めているのは最終製品の製造工程で、原料の塩がどう作られたかではありません。海外の塩田で太陽と風だけで結晶にした塩を買ってきて、日本の工場で水に溶かし、釜で煮詰め直す。このとき工程欄に並ぶのは工場でやったことだけなので、「溶解、平釜」になります。
では塩田の話はどこへ行ったのかというと、原材料名の「天日塩」という言葉がそれを引き受けています。施行規則第3条第1項ウには、原料の塩を溶かして結晶にし直した二次加工品はその原料塩の製造工程も書くこと、ただし原材料名に天日塩と書いた場合はその表示を省略できる、と書かれています。天日塩という4文字が、原料の作り方の説明を兼ねているわけです。
読み方をまとめると、こうなります。
- 原材料名=この塩が、もともとどこで何から来たか
- 工程=この会社の工場で、その原料に何をしたか
「天日塩と書いてあるのに天日と書かれていない」は、書き忘れでも隠しごとでもなく、欄の役割が違うという話でした。
伯方の塩は、同じ銘柄でも容量で工程が変わる
登録商品ページには、もう一つ細かい発見がありました。伯方塩業の登録商品を全部見ると、伯方の塩の20g・100g・200g・2.5kg・5kgは「溶解、平釜」、500g・750g・1kgは「溶解、立釜」と書き分けられています。原材料名はどれも同じです。焼塩は「溶解、立釜、焼成」で、DRYも同じ3語でした。
同じ名前の商品でも、袋の大きさが違えば工程欄の言葉が違うことがある。銘柄名だけで作り方を語れない理由が、ここに出ています。
岩塩は「採掘」から始まる別の並びになる
ピンクソルトとヒマラヤピンク岩塩は、どちらも岩塩(パキスタン)で工程は採掘、洗浄、粉砕でした。海の塩に必ず出てくる濃縮や加熱の言葉が、1つも入りません。掘って、洗って、砕く。それだけです。
ただし岩塩には別のきまりがあります。規約第4条第1項第4号は、「岩塩」と書くときは同じ視野に入る場所に、天然の岩塩鉱から採掘された塩なのか、岩塩鉱の塩を一旦溶かした塩水から作った塩なのかを明瞭に書かなければならないと定めています。同じ「岩塩」でも、掘り出したままのものと、溶かして作り直したものがあるということです。
「天然塩」「自然塩」「ミネラル豊富」は、袋に書けない言葉

売り場で「天然塩」「自然塩」という言葉を見かけなくなったと感じている人は、記憶違いではありません。規約第5条第8号に、こう書かれています。
「天然」、「自然」又はこれらに類する用語は、「天然塩」、「自然塩」等、塩を直接修飾する表現として使用することはできない。ただし、塩を直接修飾しない表現として使用する場合についてはこの限りではない。
協議会は概要のページで、この決まりに至った経緯も説明しています。自然塩は定義があいまいな言葉で、各社が自分で決めた意味で使っていた時期があり、良いイメージだけが先に立って、あとから苦情になった。だから使わないことにした、という順序です。会社名に自然塩が入っている場合は、特に強調しない範囲で書けることになっています。
書けない言葉は「天然」だけではない
施行規則第5条は不当表示の類型を並べています。原文から拾うと、次のものが該当します。
- 「ミネラル豊富」、「ミネラルいっぱい」等、ミネラルの含有量が豊富であることを意味する表示
- 合理的な根拠に基づかない「太古」、「最古」、「古代」、「昔ながら」等の歴史性を意味する表示
- 単なる「無添加」等、訴求対象である原材料等が明瞭でない表示
- 食用塩には通常使用されない添加物について、不使用である旨の表示
規約第6条第9号には、健康、美容等について効能又は効果があるかのように誤認されるおそれがある表示の禁止も入っています。塩の袋に体への良し悪しが書かれないのは、書いてはいけない決まりがあるからです。
3つめの「単なる無添加」は、このブログの名前にも関わるので書き添えておきます。何を入れていないのかを示さずに無添加とだけ書くのは、規約では不当表示の類型に入ります。塩の袋でも同じで、何を入れていないかを書かずに無添加とだけ書くことはできません。この言葉の意味は言葉の意味を追いかけた記事にまとめました。
なお「純粋」という言葉については、規約の条文にも施行規則にも見当たりませんでした。規約が名指しで止めているのは、天然・自然・特級・特選、そして根拠のない最上級や唯一性を意味する用語です。
ただし、工程が少ない塩がよいという話ではない

ここを取り違えると、選び方をまちがえます。工程欄の語数は、作り方の説明の細かさであって、品質の点数ではありません。今回の13商品でも、語数が1つのゲランドの塩と、5つの海人の藻塩を、語数だけで比べることはできません。藻塩の5語には、海藻を浸けて成分を取り出す「浸漬」という、藻塩にしかない工程が含まれています。
協議会自身も、そう書いています。概要のページにあるのは、原材料と工程の表示を見て塩の特性がすべて分かるわけではないが、塩の由緒来歴は分かる、という説明です。さらにしお公正マークは、食品としての安全性や虚偽表示がないことを保証するものではないとも明記されています。この欄は、良し悪しを比べる欄ではありません。その塩がどこから来たのかをたどる欄です。
もう一つ。工程欄がない袋もあります。規約が縛るのは規約に参加している会社なので、非会員の商品には工程が書かれていないことがあります。書いていない=隠している、ではありません。売り場でその欄が見つからないときは、会社の公式サイトの商品ページに載っていることが多いです。
味の付いた塩は、そもそも規約の外にあります。ごま塩やガーリックソルトのように食品や香辛料が入った商品は規約の対象外だと、概要のページに書かれています。うま味成分を足したタイプの表示は調味塩の原材料名を確かめた記事で扱っているので、そちらもどうぞ。
売り場でやることは1つだけ
袋を裏返して、原材料名の下に「工程」の行があるかを見ます。あれば、最初の1語を読む。溶解で始まっていれば、どこかから運んできた塩を溶かして作り直した塩。天日で始まっていれば、その会社が太陽と風で結晶にした塩。採掘で始まっていれば、掘り出した岩塩か湖塩です。これだけで、袋の表の言葉に頼らずに、どんな塩なのかが分かります。
売り場で表示を見て回るときの見方は、近所の店で買えるものを確かめた記事にまとめています。調味料全体の表示を横に見たい人は、調味料をまとめて比べた記事が早いです。
ただし弱点もあります。塩を選び直しても、その日の食事はまだ決まっていません。袋からふる分よりも、味の付いた惣菜や加工品に最初から入っている分のほうが、1日で見ると多くなるためです。宅配の弁当の食塩相当量を並べたこちらの記事では、1食あたりでどれだけ違うかが出ています。
だから、味の付いたおかずを毎日食べたい人には、もう1つの選び方があります。何を使わないかを決めて作った惣菜を、そのまま届けてもらう方法です。
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よくある質問
- Q塩の袋の「工程」欄には何が書かれているのですか?
- A
最終製品の製造工程を、順序どおりに言葉で並べた欄です。使える言葉はイオン膜・逆浸透膜・浸漬・溶解・天日・平釜・立釜・噴霧乾燥・加熱ドラム・採掘・乾燥・粉砕・焼成・混合・洗浄・造粒・くん煙の17語に決められています。
- Q「天日塩」と書いてあるのに工程に「天日」がないのはなぜですか?
- A
工程は最終製品の欄で、原料の塩がどう作られたかは原材料名の「天日塩」という言葉が引き受けているためです。登録商品974件のうち、原材料名に天日塩または天日海塩と書いた129件はすべて工程欄に天日がなく、溶解か洗浄から始まっていました。
- Q塩に添加物が入っていることはありますか?
- A
今回の13商品では3商品にありました。食卓塩と精製塩は炭酸マグネシウム、赤穂の天塩は粗製海水塩化マグネシウム(にがり)です。工程欄の「混合」が、この作業にあたります。
- Q「自然塩」「天然塩」という表示を見かけないのはなぜですか?
- A
規約第5条第8号が、天然や自然という言葉を塩に直接かけて使うことを認めていないためです。ミネラル豊富、太古、最古、古代、昔ながらといった表示も、不当表示の類型に挙げられています。
まとめ:読む場所は原材料名の1行下、「工程」の行

13商品を引き写して出た答えは2つです。工程欄に書ける言葉は17語で、その並びは13商品ともほとんど重なりませんでした。そして原材料名に天日塩と書いた129件のうち、工程欄に天日があったものは0件。天日は原材料名の欄に、工程はその会社の工場でやったことが書かれる、という分担になっていました。
きょう売り場でできることは1つ。手に取った塩の裏面で、原材料名の1行下にある「工程」の先頭の語を読んでみてください。溶解か、天日か、採掘か。その1語で、その塩がどこから来たのかが分かります。
おかずのほうまで表示を見直したくなったら、宅配という選び方もあります。原材料名を5社ぶん見比べた無添加のおかず宅配5社の比較と、金額と届き方を確かめたシェフの無添つくりおきの利用レポートを置いておきます。
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