ラベルさん先に結論です。「凝固剤」と書ける中身は、国の通知で6品目と決まっています。豆腐用凝固剤として使える添加物の一覧が、消費者庁の通知にそのまま並んでいます。にがりもその中に入っています。
そして18商品を並べたところ、実際に書かれていた物質は3品目で、名前の書かれ方は5通りに分かれました。同じにがりでも、商品によって呼び名が違います。原材料名はすべて2026年9月4日に各社公式サイトで確認しました。
にがりは自然の材料に見えて、添加物の名簿に載っている

にがりは海水から塩を取り出した後に残る液です。原料が海水なので、材料の一種だと思われやすい。ところが表示のうえでは、にがりは添加物として扱われます。
公益財団法人日本食品化学研究振興財団が公開している指定添加物リストには、食品衛生法施行規則別表第1に載る品目が並んでいて、登録品目数は476品目です。この中に塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、グルコノデルタラクトンが入っています。にがりの主成分である塩化マグネシウムは、国が使用を認めた添加物ということです。
もうひとつ、海水から作ったにがりには別の名前があります。粗製海水塩化マグネシウムです。こちらは指定添加物ではなく、既存添加物名簿に169番として載っています。名簿には「海水から塩化カリウム及び塩化ナトリウムを析出分離して得られた、塩化マグネシウムを主成分とするものをいう」と書かれています。
つまりにがりは、名前を変えて2か所の名簿に載っています。「にがりだから添加物ではない」という理解は、制度の上では成り立ちません。これを分かったうえで、実際の商品の書き方を並べます。
豆腐18商品の凝固剤の書かれ方を並べた

集めたのは、公式サイトに原材料名を載せている8つのブランドの18商品です。並べ方は1つだけ。凝固剤が何という文字で書かれているかで分けました。味と食感は判断に入れていません。
| 商品 | 会社 | 内容量 | 凝固剤の書かれ方 |
|---|---|---|---|
| 森永 絹とうふ | 森永乳業 | 250g | 凝固剤 |
| 森永 絹とうふしっかり | 森永乳業 | 253g | 凝固剤 |
| トップバリュ 木綿とうふ | イオン | 300g | 豆腐用凝固剤 |
| コープ 木綿とうふ150g×3個 | 日本生協連 | 150g×3 | 凝固剤(塩化Mg) |
| おかめ豆腐 国産絹400g | タカノフーズ | 400g | 凝固剤(塩化Mg(にがり)) |
| おかめ豆腐 国産木綿400g | タカノフーズ | 400g | 凝固剤(塩化Mg(にがり)) |
| 職人豆腐 木綿 | アサヒコ | 350g | 凝固剤(塩化マグネシウム(にがり)) |
| 職人豆腐 大山阿夫利 木綿 | アサヒコ | 350g | 凝固剤(塩化マグネシウム(にがり)) |
| トップバリュ ゆきほまれ使用絹 | イオン | 200g×2 | 凝固剤[塩化マグネシウム(にがり)] |
| トップバリュ ゆきほまれ使用木綿豆腐 | イオン | 320g | 凝固剤[塩化マグネシウム(にがり)] |
| 一丁寄せもめん | 太子食品工業 | 380g | 塩化マグネシウム(にがり) |
| 職人豆腐 硬派 | アサヒコ | 150g×3 | 凝固剤(塩化マグネシウム含有物(にがり)) |
| 有機豆腐 濃い絹 | アサヒコ | 350g | 凝固剤(塩化マグネシウム含有物(にがり)) |
| 旨味贅沢 2個小分け | さとの雪食品 | 190g×2 | 凝固剤(粗製海水塩化マグネシウム(にがり)) |
| トップバリュ 有機もめん豆腐 | イオン | 300g | 凝固剤[粗製海水塩化マグネシウム(にがり)、硫酸カルシウム] |
| トップバリュ 有機きぬごし豆腐 | イオン | 300g | 凝固剤[粗製海水塩化マグネシウム(にがり)、硫酸カルシウム] |
| 金のとうふ 生仕立て 木綿 | セブンプレミアム | 360g | 粗製海水塩化マグネシウム(にがり) |
| 日光名水仕込み生とうふ絹 | 太子食品工業 | 360g | 粗製海水塩化マグネシウム(にがり) |

大きく3つに分かれました。「凝固剤」または「豆腐用凝固剤」だけで止めている商品が3つ、その後ろに物質名を足している商品が12、物質名だけを書いて「凝固剤」の文字がない商品が3つです。
物質名のほうも1通りではありません。塩化Mgが3商品、塩化マグネシウムが5商品、塩化マグネシウム含有物が2商品、粗製海水塩化マグネシウムが5商品。ここに硫酸カルシウムを併記した商品が2つ加わります。物質としては3種類、文字としては5通りという内訳です。
原材料名は、どれも会社の商品ページから写しました。森永 絹とうふ、森永 絹とうふしっかり、トップバリュ 木綿とうふ、コープ 木綿とうふ、おかめ豆腐 国産絹400g、おかめ豆腐 国産木綿400g、職人豆腐 木綿、職人豆腐 大山阿夫利 木綿、トップバリュ ゆきほまれ使用絹、トップバリュ ゆきほまれ使用木綿豆腐、一丁寄せもめん、職人豆腐 硬派、有機豆腐 濃い絹、旨味贅沢 2個小分け、トップバリュ 有機もめん豆腐、トップバリュ 有機きぬごし豆腐、金のとうふ 生仕立て 木綿、日光名水仕込み生とうふ絹から、2026年9月4日に写しました。
なお、相模屋食料と男前豆腐店とやまみは公式サイトに栄養成分表示は出ていますが、原材料名の全文は見当たりませんでした。比較表からは外しています。
「凝固剤」と書ける中身は、通知で6品目と決まっている

「凝固剤」の3文字だけで済ませられるのはなぜか。答えは一括名という書き方にあります。
消費者庁の食品添加物表示に関するマメ知識には、一括名で表示できる添加物として14の言葉が挙げられています。イーストフード、ガムベース、かんすい、酵素、光沢剤、香料、酸味料、チューインガム軟化剤、調味料、豆腐用凝固剤、苦味料、乳化剤、水素イオン濃度調整剤、膨張剤の14です。豆腐用凝固剤は、その14分の1に入っています。
では中身に何を使えるのか。消費者庁の通知「食品表示基準について」別添 添加物関係の「11 豆腐用凝固剤」に、そのまま書いてあります。定義は「大豆から調製した豆乳を豆腐様に凝固させる際に用いられる添加物及びその製剤」、一括名は「豆腐用凝固剤又は凝固剤」。そして添加物の範囲として、次の6品目が並んでいます。
| 品目名 | 名簿 | 簡略名 |
|---|---|---|
| 塩化カルシウム | 指定添加物 | 塩化Ca |
| 塩化マグネシウム | 指定添加物 | 塩化Mg |
| グルコノデルタラクトン | 指定添加物 | なし |
| 硫酸カルシウム | 指定添加物 | 硫酸Ca |
| 硫酸マグネシウム | 指定添加物 | 硫酸Mg |
| 粗製海水塩化マグネシウム | 既存添加物 | 塩化マグネシウム含有物 |
簡略名は同じ通知の「別添 添加物1-1 簡略名又は類別名一覧表」と「別添 添加物2-1 既存添加物名簿収載品目リスト」から拾いました。グルコノデルタラクトンだけは、簡略名の一覧に行がありません。使えば12文字のまま書くことになります。
だから、「凝固剤」としか書いていない商品でも、中身はこの6つのどれかです。森永乳業の2商品とトップバリュの木綿とうふがそれにあたります。ただし、6つのどれなのかは表示からは分かりません。
同じにがりが4通りの名前になるのは、名簿が2つあるから

塩化マグネシウムと塩化マグネシウム含有物は、別の品目
18商品に出てきた4つの書き方を、通知の6品目と突き合わせるとこうなります。
- 塩化Mgと塩化Mgは、指定添加物の塩化マグネシウムの簡略名
- 塩化マグネシウムは、同じ品目を略さずに書いたもの
- 塩化マグネシウム含有物は、既存添加物の粗製海水塩化マグネシウムの簡略名
- 粗製海水塩化マグネシウムは、その品目を略さずに書いたもの
一字違いに見えますが、塩化マグネシウムと塩化マグネシウム含有物は、載っている名簿が違う別の品目です。前者は国が個別に指定したもの、後者は海水から作られて長く使われてきたものとして名簿に残っているほうです。
18商品の内訳は、塩化マグネシウムと書いた商品が8商品、粗製海水塩化マグネシウムと書いた商品が7商品でした。売り場でいう「にがりの豆腐」は、この2つがほぼ半々で混ざっています。同じ会社でも商品で分かれていて、アサヒコの職人豆腐 木綿は塩化マグネシウム、職人豆腐 硬派は塩化マグネシウム含有物です。
「にがり」の2文字は、制度の言葉ではない
ここでもう1つ。この6品目のどこにも、「にがり」という言葉はありません。品目名にも簡略名にも出てきません。決まりのほうは、あくまで塩化マグネシウムや粗製海水塩化マグネシウムという名前で扱っています。
では商品に書かれている「(にがり)」は何か。全国豆腐連合会は表示項目の説明で、豆腐用凝固剤または凝固剤は制度上これのみの記載でよいとしたうえで、「にがり」表示とした場合には物質名表示が義務付けられていると書いています。物質名の後ろに添える言葉、という位置づけです。
実際、18商品で「にがり」の2文字が単独で置かれていた商品は1つもありませんでした。必ず物質名とセットで書かれています。「凝固剤(にがり)」という書き方も見当たりません。
ただし、書き方が短い=中身が少ない、ではない

書き方の短さと中身の少なさを同じものと思うと、選び方をまちがえます。「凝固剤」の3文字で止めている商品と、物質名まで書いている商品は、同じ制度の中の別の書き方です。短いほうが手を抜いている、という話ではありません。
逆に、物質名を書くと文字数が増えます。トップバリュのゆきほまれ使用木綿豆腐は「凝固剤[塩化マグネシウム(にがり)]、レシチン(大豆由来)、グリセリン脂肪酸エステル、炭酸マグネシウム」と続いていて、行が長い。この長さは、書ける名前を書いた結果です。
もう1つ、断っておくことがあります。豆腐には泡を減らすための添加物が使われることがあり、条件を満たすと原材料名から外れます。今回の18商品で「消泡剤」の文字があったのは、タカノフーズの2商品とアサヒコの職人豆腐 木綿、トップバリュの木綿とうふの4商品でした。ただし書いていない14商品が使っていないとは限りません。この免除のしくみは豆腐6商品で書いてある会社と書いていない会社を分けた記事に詳しく置きました。
同じ理由で、「無添加豆腐」と書かれた商品も、表示に何も出ていないという意味にとどまります。加工助剤とキャリーオーバーは表示が免除されるので、使っていないことの証明にはなりません。この読み方は0品目の意味をまとめた記事のとおりです。パッケージ表の「無添加」という3文字がどこまでを指すかは、無添加とは何かを整理した記事にあります。
大豆の後ろの括弧も、4通りに分かれていた

凝固剤の前、原材料名の1番目にも書き方の違いが出ました。大豆の後ろに付く括弧です。18商品のうち10商品に遺伝子組換えについての記載があり、その文言は4通りに分かれました。
- 分別生産流通管理済み(コープ 木綿とうふ、アサヒコ 有機豆腐 濃い絹の2商品)
- 遺伝子組換え混入防止管理済(タカノフーズの2商品、アサヒコの職人豆腐3商品)
- 遺伝子組換え混入を防ぐ分別(太子食品工業の2商品)
- 遺伝子組換えでない(セブンプレミアム 金のとうふ)
残る8商品は、大豆の産地だけを括弧に入れていました。そして上の3つは同じことを言っています。消費者庁の通知「食品表示基準について」別添 遺伝子組換え食品に関する事項のGM-37に、一括表示事項欄に表示する場合の例として「大豆(分別生産流通管理済み)」「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」「大豆(遺伝子組換えの混入を防ぐため分別)」の3つが並んでいます。書き方が違うだけで、指しているのは分けて管理したという同じ事実です。
4つめの「遺伝子組換えでない」は条件が別です。同じ通知のGM-39に、適切に分別生産流通管理を行ったうえで遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる場合に限りこの表示ができる、と書かれています。2023年4月からのルールで、混入が5%以下なら書ける、ではなくなりました。
だから「分別生産流通管理済み」より「遺伝子組換えでない」のほうが一段きびしいことになります。今回18商品で後者を書いていたのは、北海道産の丸大豆を使った金のとうふ1つでした。
では、売り場で何を見るか

18商品を並べて出てきたことから、3つに絞ります。
1つめ。凝固剤の中身を知りたいなら、物質名まで書いてある商品を選ぶ。「凝固剤」だけの商品は、6品目のどれかまでしか分かりません。物質名まで出ている商品なら、その場で決まります。
2つめ。「塩化マグネシウム」と「塩化マグネシウム含有物」を読み分ける。後ろに含有物が付いていれば、海水由来の粗製海水塩化マグネシウムです。文字が3つ増えるだけなので、見落としやすいところです。
3つめ。硫酸カルシウムが並んでいても、にがりを使っていないわけではない。トップバリュの有機2商品は、粗製海水塩化マグネシウムと硫酸カルシウムを併記していました。2つ使うと、両方書くことになります。
売り場のどこに何があるかを先に知りたいときは、スーパーで添加物0品目の商品がどの売り場にあるかを回った記事が近道です。豆腐と同じ大豆の加工品では、納豆と豆腐の添加物がどこに入っているかを見た記事もあります。
そのうえで、豆腐1品を選び直しても、その日のおかずはまだ決まっていません。原材料名を毎回読むかわりに、添加物を入れない前提で作られた惣菜を取り寄せる方法もあります。
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よくある質問
- Qにがりは食品添加物なのですか?
- A
名簿には載っています。主成分の塩化マグネシウムは指定添加物リストの476品目に含まれ、海水から作った粗製海水塩化マグネシウムは既存添加物名簿の169番です。どちらも消費者庁の通知で、豆腐用凝固剤として使える6品目の中に並んでいます。
- Q「凝固剤」としか書いていない豆腐は、中身が分かりませんか?
- A
6品目のどれかまでは決まります。通知で範囲が塩化カルシウム、塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトン、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、粗製海水塩化マグネシウムの6つに限られているためです。そのどれかを知りたいときは、容器に書かれた表示責任者に問い合わせることになります。
- Q「にがり使用」と書いてある豆腐は、書いていない豆腐と何が違いますか?
- A
表示のうえでは、物質名を出しているかどうかの違いです。全国豆腐連合会は、凝固剤のかわりに「にがり」表示とした場合には物質名表示が義務付けられていると説明しています。今回の18商品でも、「にがり」の2文字は必ず物質名とセットで書かれていました。
- Q「分別生産流通管理済み」と「遺伝子組換えでない」はどう違いますか?
- A
条件が違います。前者は分けて管理したという意味で、「遺伝子組換え混入防止管理済」「遺伝子組換えの混入を防ぐため分別」も同じ内容の言い換えです。後者は2023年4月からのルールで、混入がないと認められる場合に限って書けます。今回の18商品で後者は1つでした。
まとめ:読むのは「凝固剤」の3文字ではなく、その後ろの括弧

18商品を並べて出た答えは2つです。「凝固剤」と書ける中身は通知で6品目に限られていて、実際に書かれていたのは3品目でした。塩化マグネシウム、粗製海水塩化マグネシウム、硫酸カルシウムです。
そしてその3品目が、5通りの文字に分かれていました。塩化Mg、塩化マグネシウム、塩化マグネシウム含有物、粗製海水塩化マグネシウム、硫酸カルシウムです。にがりという2文字は、そのどれの後ろにも括弧で添えられているだけです。
明日やることは1つ。売り場でパックを裏返し、「凝固剤」の後ろに括弧が付いているかを見る。付いていれば中身がその場で決まり、なければ6品目のどれかまでで止まります。それだけで、読み方が変わります。
買い物のたびに裏を読むのが重いときは、届けてもらう選択もあります。5社の表示を突き合わせたおかず宅配5社の原材料比較と、値段と中身を1つずつ確かめた口コミと料金の実地レポートが参考になります。
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