ラベルさん先に結論です。「軟化剤」として書ける添加物は3品目で、消費者庁の通知に名前がそのまま並んでいます。ところが「苦味料」として書ける添加物は15品目あるのに、その名前は通知のどこにも並んでいません。別の名簿の用途欄を引き当てて、初めて15品目にたどり着きます。
同じ一括名なのに、中身の決め方が正反対でした。市販品でも差が出ます。ロッテのガム70商品のうち、軟化剤が書かれていたのは29商品。一方、苦味料と書かれた商品は1つも見つけられませんでした。この記事では、条文と通知と名簿を順に開いて、この2語の書かれ方を確かめます。数字はすべて2026年9月5日に法令データベースと各社公式サイトで確認しました。
「軟化剤」と「苦味料」は、同じ表に載っているのに扱いが違う

この2語は、食品表示基準という内閣府令の同じ表に並んでいます。今回はその表と、消費者庁の通知と、2つの添加物名簿を突き合わせました。市販品の側は、ロッテの公式サイトに載っているガム70商品の原材料名を写しています。
原材料名に書かれる添加物の名前には、物質そのままの名前と、種類をまとめた名前の2通りがあります。後者を一括名と呼び、全部で14あります。仕組みの説明は香料の2文字で何が隠れるかを整理した記事に書きました。
軟化剤と苦味料は、その14のうちの2つです。ただ、売り場で見かける回数がまるで違います。軟化剤はガムの裏で当たり前のように出てきますが、苦味料はほとんど目にしません。この差が制度から来ているのか、それとも会社の書き方の選び方から来ているのか。制度から来ているかどうかは、原文を開けば答えが出ます。
別表第七で、書ける言葉が短くなるのは軟化剤だけだった

食品表示基準の別表第七には、左に「使う目的の名前」、右に「原材料名に書いてよい表示」が2列で並んでいます。14行のうち、左と右で言葉が変わるのは5行だけでした。その5行を写します。
| 上欄(使う目的の名前) | 下欄(原材料名に書ける表示) |
|---|---|
| チューインガム軟化剤 | 軟化剤 |
| 調味料(甘味料及び酸味料に該当するものを除く。) | 調味料(アミノ酸)ほか、全部で8通り |
| 豆腐用凝固剤 | 豆腐用凝固剤又は凝固剤 |
| 水素イオン濃度調整剤 | 水素イオン濃度調整剤又はpH調整剤 |
| 膨張剤 | 膨張剤、膨脹剤、ベーキングパウダー又はふくらし粉 |
残る9行は左右が同じ言葉です。苦味料もその1つで、上欄も下欄も「苦味料」と書かれています。
5行のうち4行は、書き方の選択肢が2つ以上あるか、カッコの中で分類まで指定される形でした。調味料が8通りに分かれる話はカッコの「等」が何を意味するかを追った記事にあります。選択肢が1つしかなく、しかも上欄より文字が減るのは、チューインガム軟化剤の行だけです。「チューインガム」の6文字が落ちて「軟化剤」の3文字になります。
ここが読みどころでした。落ちた6文字は、使ってよい食品を指しています。上欄がチューインガム軟化剤である以上、この一括名を使えるのはガムに限られます。ガム以外の食品に同じ物質を使ったなら、軟化剤とは書けません。
軟化剤の中身は3品目。通知に名前がそのまま並んでいた

一括名ごとに、中身として認める範囲を決めているのが消費者庁の通知です。「食品表示基準について」という通知に付いた別添 添加物1-4「各一括名の定義及びその添加物の範囲」に書かれています。9番目がチューインガム軟化剤でした。定義を原文のまま引きます。
(1)定 義 チューインガムを柔軟に保つために使用する添加物及びその製剤
(2)一括名 軟化剤
(3)添加物の範囲 以下の添加物をチューインガム軟化剤としての目的で使用する場合
グリセリン D-ソルビトール プロピレングリコール
3品目です。名前がそのまま印刷されていて、名簿を引きに行く必要がありません。14の一括名の中で、範囲がここまで短いものは他にありませんでした。香料は合成だけで2,500品目前後、膨張剤は41品目が並びます。
| 通知の表記 | 別名・簡略名 | 載っている名簿 |
|---|---|---|
| グリセリン | 別名グリセロール | 指定添加物(食品衛生法施行規則 別表第一) |
| プロピレングリコール | なし | 指定添加物(同上) |
| D-ソルビトール | 別名D-ソルビット、簡略名ソルビトール・ソルビット | 指定添加物(同上) |
3品目とも、食品衛生法施行規則の別表第一に載っていました。この別表第一が指定添加物の名簿で、載っているのは476品目です。軟化剤の3品目は、国が個別に名前を指定した添加物ばかりでした。
簡略名にも注目してください。D-ソルビトールは「ソルビトール」とだけ書いてよい決まりです。つまり同じ物質が、目的しだいで「軟化剤」とも「ソルビトール」とも書かれます。原材料名に両方が並んでいても、決まりの上では矛盾しません。
苦味料の中身は15品目。名簿の用途欄を引かないと出てこない

同じ通知の4番目が苦味料です。定義と範囲を原文のまま引きます。
(1)定 義 食品の製造又は加工の工程で,苦味の付与又は増強による味覚の向上又は改善のために使用される添加物及びその製剤
(2)一括名 苦味料
(3)添加物の範囲 別添 添加物2-1及び別添 添加物2-3の用途欄に「苦味料等」と記載されている添加物(香辛料抽出物を除く。)
物質名が1つも書かれていません。別添 添加物2-1は既存添加物名簿収載品目リスト、別添 添加物2-3は一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用される品目リストです。この2つの名簿を開き、用途欄が「苦味料等」になっている行を拾い出すと、香辛料抽出物を除いて15品目になりました。
| 品目名 | 載っている名簿 |
|---|---|
| イソアルファー苦味酸 | 既存添加物(別添 添加物2-1) |
| カフェイン(抽出物) | 既存添加物 |
| キナ抽出物 | 既存添加物 |
| キハダ抽出物 | 既存添加物 |
| ゲンチアナ抽出物 | 既存添加物 |
| 酵素処理ナリンジン | 既存添加物 |
| ジャマイカカッシア抽出物 | 既存添加物 |
| テオブロミン | 既存添加物 |
| ナリンジン | 既存添加物 |
| ニガヨモギ抽出物 | 既存添加物 |
| マンネンタケ抽出物 | 既存添加物 |
| オリーブ茶 | 一般飲食物添加物(別添 添加物2-3) |
| ダイダイ抽出物 | 一般飲食物添加物 |
| ホップ抽出物 | 一般飲食物添加物 |
| ヨモギ抽出物 | 一般飲食物添加物 |
15品目のうち11品目が既存添加物、4品目が一般飲食物添加物でした。指定添加物の476品目には、1品目も入っていません。軟化剤が3品目とも指定添加物だったのと、ちょうど裏返しの結果です。
香辛料抽出物だけが名指しで外されている理由も、名簿を見ると見当がつきます。この品目は用途欄に「苦味料等」と書かれていますが、オールスパイスからワサビまで数十種の原料が1行にまとめられていて、香辛料として使うほうが主だからです。原文が除いているので、香辛料抽出物を使っても苦味料とは書けません。
ちなみに、名簿の用途欄は「苦味料等」で、末尾に「等」が付きます。用途欄に書かれた使い方以外に使ってはいけない、という意味ではありません。表示が免除される仕組みをまとめた記事で触れたとおり、原材料名に出る文字と、実際に使われた物の範囲は一致しないことがあります。
ロッテのガム70商品では、軟化剤は29商品に書かれていた

制度の話が続いたので、売り場の側を見ます。ロッテの公式サイトに載っているガム70商品の原材料名を写し、軟化剤の3文字があるかどうかで分けました。ガム以外の食品では軟化剤と書けないので、集めたのはガムだけです。
| 書かれ方 | 商品数 | その中で光沢剤もある商品 |
|---|---|---|
| 軟化剤あり | 29商品 | 3商品 |
| 軟化剤なし | 41商品 | 41商品 |
軟化剤が書かれていない41商品は、1商品の例外もなく光沢剤が書かれていました。この41商品はキシリトールガムやACUOなど、外側に糖衣をまとった粒の商品です。逆に軟化剤が書かれた29商品は、グリーンガム、クールミントガム、ブラックブラックガム、フリーゾーンガムのような板の商品と、ふ~せんの実のような粒の商品が中心でした。板と粒で書かれるものが入れ替わっています。
なお、ガムベースは70商品すべてに書かれていました。商品の並べ方と品目数のほうはクッキーとグミとガムを22商品ぶん比べた記事で扱っています。
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1商品だけ、書き方が目を引きました。小梅ガムの原材料名には「ソルビトール」と「軟化剤」が同じ列に並んでいます。さきほど見たとおり、ソルビトールはD-ソルビトールの簡略名で、そのD-ソルビトールは軟化剤の3品目に入っています。どちらがどの物質なのかは、この表示からは追えません。目的が違えば書き方が変わるので、こうして隣り合うことがあります。
「苦味料」と書かれた市販品は、1つも見つけられなかった

次に苦味料を探しました。15品目の由来から見て、苦い飲みものと苦い菓子が本命です。ホップ、グレープフルーツの皮、キナの樹皮、ヨモギ、ダイダイ。ところが、メーカー公式サイトで原材料名に「苦味料」と書かれた商品を1つも見つけられませんでした。
いちばん近いと思っていたトニックウォーターも外れました。日本コカ・コーラの公式サイトによれば、カナダドライ トニックウォーターの原材料名は「果糖ぶどう糖液糖/炭酸、酸味料、香料」です。商品説明には苦味という言葉が出てきますが、原材料名に苦味料はありません。
もう1つ、ガムの側に手がかりがありました。ロッテのブラックブラックガムでは、スラッシュのうしろに軟化剤とカフェインが隣り合って書かれています。
このカフェインは、苦味料として書ける15品目の1つです。それでも一括名ではなく物質名で書かれていました。一括名は「書いてよい」という決まりであって、「書かなければならない」という決まりではありません。物質名で書けば、読む側には情報が増えます。苦味料の3文字が売り場で見つからないのは、この選び方の結果とも読めます。
ここは断っておきます。今回探した範囲で見つからなかった、という話です。苦味料が使われていない、という意味ではありません。モンデリーズ・ジャパンのクロレッツとリカルデントは、公式サイトに原材料名の記載を見つけられず、確かめられませんでした。
品目数の多い少ないでは、ガムも飲みものも選べない

ここまでの数字は、表示に何と書かれているかの話です。品目が多い商品が体に悪い、という順位ではありません。軟化剤が書かれた29商品と、書かれていない41商品の違いは、板か粒かという作り方の違いでした。使ってよい量には決まりがあり、書かれた文字数と口に入る量は別のものです。
そのうえで、売り場でできることは2つあります。1つ目は、スラッシュより後ろに「軟化剤」があったら、それはガム専用の3品目のどれかだと分かるということ。ガム以外の食品でこの3文字を見ることはありません。2つ目は、「苦味料」を見つけたら、それは既存添加物か一般飲食物添加物の15品目のどれかだということ。指定添加物ではないと、原文から言い切れます。
毎回袋を裏返すのが面倒なら、届く前に原材料名を出している宅配という選び方もあります。近所の売り場をひととおり回って表示を写した話はスーパーで買える無添加を1軒ぶん調べた記事にあります。
よくある質問
- Q「軟化剤」はガム以外の食品にも書かれますか?
- A
書かれません。食品表示基準 別表第七の上欄が「チューインガム軟化剤」で、定義も「チューインガムを柔軟に保つために使用する添加物及びその製剤」となっているためです。同じグリセリンをほかの食品に使った場合は、物質名で書くことになります。
- Q苦味料として書ける添加物は何品目ですか?
- A
15品目です。消費者庁の別添 添加物1-4は品目名を挙げず、既存添加物名簿と一般飲食物添加物の名簿で用途欄が「苦味料等」の行を指しています。その行を拾って、原文が除いている香辛料抽出物を外すと15品目になりました。
- Q苦味料に指定添加物は入っていますか?
- A
入っていません。15品目の内訳は既存添加物が11品目、一般飲食物添加物が4品目で、食品衛生法施行規則 別表第一の指定添加物476品目とは重なりませんでした。軟化剤の3品目が3つとも指定添加物なのと逆の形です。
- Q原材料名に「ソルビトール」と「軟化剤」が両方あるのはなぜですか?
- A
D-ソルビトールは簡略名を「ソルビトール」といい、同時に軟化剤の3品目にも入っているためです。使った目的によって書き方が変わるので、決まりの上では両方が並んでもおかしくありません。どちらがどの物質なのかは、表示からは追えません。
まとめ:3品目は原文に名前があり、15品目は名簿の中にあった

2語を並べて出た答えは1つです。軟化剤は3品目が通知に印刷され、苦味料は15品目が2つの名簿に散らばっていました。前者は3品目とも指定添加物、後者は指定添加物がゼロ。同じ一括名でも、中身のたどり着き方はここまで違いました。
売り場での差も同じ向きでした。ロッテのガム70商品のうち29商品に軟化剤があり、苦味料と書かれた商品は見つけられていません。ブラックブラックガムのカフェインのように、15品目のうちの1つが物質名で書かれている例なら見つかりました。
明日やることは1つ。ガムの袋を裏返して、軟化剤の3文字があるかどうかを見る。あれば、グリセリンかプロピレングリコールかD-ソルビトールのどれかが入っています。
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