【酵素とは】一括名は70品目|書かれるのは働きが残ったときだけ

暗い床の上に、波打つ金属の薄い板が横長に広げられた静かな部屋 添加物辞典
ラベルさんラベルさん
原材料名で「酵素」って見たことある。あれ、健康コーナーで売ってる酵素と同じもの?
うーめんうーめん
別の話だ。原材料名の「酵素」は、内閣府令の表に載っている添加物の一括名。14ある一括名の中で、この1つだけ定義の書き方が違う。今日はそこを読む。

先に結論です。原材料名に「酵素」と印刷されるのは、その酵素ができあがった食品でまだ働いているときに限られます。消費者庁の通知が、一括名「酵素」を「最終食品においても失活せず,効果を有する添加物及びその製剤」と定義しているからです。一括名は全部で14種ありますが、定義に「最終食品」という言葉が出てくるのは、この1つだけでした。

裏返すと、加熱などで働きを終えた酵素は、この一括名に当てはまりません。表示の対象から除かれる加工助剤という区分に移ります。この決まりを通すと酵素には、一括名で書かれる酵素と、そもそも表示に出ない酵素の2通りがあることになります。

この記事が扱うのは表示の仕組みだけです。酵素が体にどう働くかは表示のルールからは読めませんし、評価もしません。健康食品として売られている飲みものやサプリメントも扱いません。条文と通知、商品の原材料名は、すべて2026年9月5日に確認しました。

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「酵素」は、別表第七に並ぶ14の一括名の1つ

灰色の壁の前に波打つ模様の銀色の板が1枚立ててある

原材料名の2文字がどの決まりから来ているのかを、法令の原文で確かめます。開くのは食品表示基準の第3条と、その第3条が指している別表第七の2か所です。

食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の第3条は、添加物の書き方について「別表第七の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては同表の下欄に掲げる表示をもって、これに代えることができる」と定めています。その別表第七を開くと、上欄に「酵素」、下欄にも「酵素」と書かれていました。物質名を書く代わりに、この2文字で済ませてよいという意味です。

出典:食品表示基準 別表第七(第三条関係)(e-Gov法令検索・2026年9月5日確認)

別表第七に並ぶのは14項目です。イーストフードからふくらし粉まで、まとめて書いてよい言葉が法令で決まっています。この仕組みの全体像は2文字の後ろに3,000品目超が隠れる香料の記事で扱ったので、ここからは酵素の行だけを追います。

数える前に1つ。加工助剤とキャリーオーバーは、そもそも書かなくてよいことになっています。0品目は「表示に出ていない」というところまでを指します。

ここまでで言えるのは1つです。原材料名の「酵素」は、作り手が略した言葉ではなく、内閣府令の表に載っている正式な書き方でした。

14の定義のうち、「最終食品」と書いてあるのは酵素だけだった

波打つ銀色の板の縁が黒い石の台の上に重なっている

一括名の定義は、消費者庁の通知「食品表示基準について」の別添 添加物1-4にあります。14項目の定義を1つずつ読み比べました。まず酵素の項を、原文のまま写します。

項目 原文
(1)定 義 食品の製造又は加工の工程で,その有する触媒作用を目的として使用された,生活細胞によって生産された酵素類であって,最終食品においても失活せず,効果を有する添加物及びその製剤
(2)一括名 酵素
(3)添加物の範囲 アスパラギナーゼ及びプシコースエピメラーゼ並びに別添 添加物2-1の用途欄に「酵素」と記載された添加物

出典:消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物1-4 各一括名の定義及びその添加物の範囲(2026年9月5日確認)

読みどころは「最終食品においても失活せず,効果を有する」の一節です。使ったかどうかではなく、できあがった食品に働きが残っているかどうかが条件になっています。同じ別添の残り13項目に、この条件はありません。定義が使う場面をどう書いているかを並べます。

一括名定義に書かれている場面(原文から)
イーストフードパン,菓子等の製造工程で,イーストの栄養源等の目的で使用される
ガムベースチューインガム用の基材として使用される
かんすい中華麺類の製造に用いられるアルカリ剤
苦味料苦味の付与又は増強による味覚の向上又は改善のために使用される
酵素触媒作用を目的として使用された酵素類であって,最終食品においても失活せず,効果を有する
光沢剤食品の保護及び表面に光沢を与える目的で使用される
香料香気を付与又は増強するため添加される
酸味料酸味の付与又は増強による味覚の向上又は改善のために使用される
チューインガム軟化剤チューインガムを柔軟に保つために使用する
調味料味の付与又は味質の調整等味覚の向上又は改善のために使用される
豆腐用凝固剤大豆から調製した豆乳を豆腐様に凝固させる際に用いられる
乳化剤食品に乳化,分散,浸透,洗浄,起泡,消泡,離型等の目的で使用される
水素イオン濃度調整剤食品を適切なpH領域に保つ目的で使用される
膨脹剤パン,菓子等の製造工程で添加し,ガスを発生して生地を膨脹させ多孔性にする

13項目が書いているのは、何のために使うかだけです。できあがりの状態まで条件にしているのは酵素だけでした。調味料の「等」の付き方で書き方が8通りに分かれる話は調味料(アミノ酸等)の記事にあります。

「酵素」で書ける添加物は、合わせて70品目

銀色の金属板の上に灰色の丸い石の板が4枚並んでいる

範囲の欄が挙げているのは、物質名2つと、別のリストの1列です。そのリストを開いて、用途欄に「酵素」と書かれた行がいくつあるかを確かめました。

範囲の欄にある「別添 添加物2-1」は、既存添加物名簿収載品目リストです。令和7年8月25日の改正後は全327品目で、そのうち用途欄が「酵素」の品目は68でした。アガラーゼ、α-アミラーゼ、セルラーゼ、パパイン、ブロメライン、リゾチーム、レンネットなどが並びます。ここに指定添加物のアスパラギナーゼとプシコースエピメラーゼを足すと、合わせて70品目になります。

68という数字は、業界の側の資料でも同じでした。日本応用糖質科学会の会誌に載った2014年の解説「食品加工用酵素の現状について」は、既存添加物名簿の酵素について「このリストには現在68品目が収載されている」と書いています。

出典:岡田正通「食品加工用酵素の現状について」応用糖質科学 第4巻第4号(2014年)(2026年9月5日確認)

細かい話を1つ。同じ通知の別添 添加物2-3(一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用される品目リスト)にも、用途欄が「酵素」の品目が1つあります。乳酸菌濃縮物です。ただし酵素の範囲の欄が挙げているのは2-1だけで、苦味料の欄のように「別添 添加物2-1及び別添 添加物2-3」とは書かれていません。範囲は、リストの名前まで指定して閉じられています。

香料は候補が3,000品目を超えます。それに比べれば、酵素の70品目は小さな数です。それでも、袋の2文字からどれを使ったのかは決められません。

働きが残っていない酵素は、原材料名から外れる

黒い床に銀色の細長い薄片が4枚、光の影の中に並ぶ

定義を裏返すと、最終食品で失活した酵素は一括名「酵素」に当てはまりません。行き先はどこになるのか。条文と業界の解説の2つで確かめます。

食品表示基準の第3条は、表示の対象から除くものとして加工助剤を挙げています。条文の全文と、国の資料に載っている例は、免除の2区分を原文で読んだ記事にまとめました。ここでは、酵素がその区分に入る場面だけを見ます。

先ほどの2014年の解説は、酵素の表示要件を1文でこう整理しています。「最終食品中で効果を有しない場合は加工助剤となり,表示は免除される。」

パンや菓子のように途中で加熱する食品では、生地の中で働いた酵素が、焼く工程で熱を受けて働きを終えることがあります。そうなると、使っていても原材料名には出ません。「酵素」の2文字が見あたらないことは、酵素を使っていない証明にはならないということです。

逆の読み方も添えます。「酵素」と書いてある商品が、書いていない商品より多く使っているという意味でもありません。書かれるかどうかを決めているのは量ではなく、できあがりに働きが残っているかどうかです。当サイトは安全性の評価をしていません。

ミックス粉11商品のうち、「酵素」が書かれていたのは3商品

銀色の台の上に灰色の丸い石の板が3枚重ねてある

家庭でパンを焼くためのミックス粉の原材料名を、メーカーの公式ページから写しました。昭和産業4商品、共立食品1商品、シロカ6商品の合わせて11商品です。スラッシュ(/)より後ろに何が並ぶかで見ます。酵素が書かれていた3商品から並べました。

商品会社スラッシュより後ろ品目数
ぜいたく生食パンミックス 290g昭和産業増粘剤(ペクチン)、香料、酵素、ビタミンC4品目
ホームベーカリー用パンミックス 290g昭和産業増粘剤(ペクチン)、酵素、ビタミンC3品目
贅沢食パンミックス プレーン SHB-MIX3100シロカ酵素、香料、乳化剤、ビタミンC、カゼインナトリウム5品目
トースターで簡単ふんわりパンミックス 200g昭和産業加工でん粉、ベーキングパウダー2品目
フライパンでつくれるピッツァミックス 400g昭和産業加工でん粉、ベーキングパウダー、乳化剤3品目
ホームベーカリー専用パンミックス 1kg共立食品乳化剤1品目
食パンミックス プレーン SHB-MIX1260シロカ加工でん粉、グリシン2品目
食パンミックス ソフトパン SHB-MIX1270シロカ乳化剤、カゼインナトリウム、香料3品目
食パンミックス スウィートパン SHB-MIX1290シロカカゼインナトリウム、乳化剤、香料、甘味料(ステビア)4品目
食パンミックス メープル風味食パン SHB-MIX1300シロカ香料、着色料(カラメル)、甘味料(ステビア)3品目
食パンミックス 糖質76%オフ SHB-MIX3000シロカ加工でん粉、セルロース、カゼインナトリウム、システイン4品目

「酵素」があったのは、昭和産業の2商品とシロカの贅沢食パンミックスの3商品です。同じミックス粉でも、共立食品のように乳化剤1品目で終わる商品があり、加工でん粉とベーキングパウダーだけの商品もありました。

表の見方を2つ補います。シロカの6商品は、袋の中でパンミックスとドライイーストが分かれていて、原材料名も別々に書かれています。表に載せたのはパンミックスの分です。ドライイーストの分は6商品とも「イースト/乳化剤、ビタミンC」でした。もう1つ、ミックス粉は焼く前の粉の状態で売られる商品です。袋の中の酵素は、まだ働きを持ったまま売られていることになります。

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焼き上がった食パンの原材料名に、「酵素」の2文字はなかった

灰色の壁ぎわに白い石の細長い板が2枚立てかけてある

粉のまま売る商品で「酵素」が出るなら、焼いて袋に入れた商品ではどうなるのか。当サイトが公式ページから原材料名を写した食パンの記事2本を開き直しました。

市販の食パン13商品を1つずつ記録したパン屋の袋に原材料名がない理由を扱った記事では、10商品が0品目でした。残る3商品に書かれていたものの中にも、「酵素」はありません。ふんわり食パン6商品を並べた記事も同じで、6商品のどこにも酵素は出てきませんでした。

粉の状態で売る商品には書かれ、焼いた商品には書かれない。この差は、定義の「最終食品においても失活せず」という条件とそろっています。ただし、焼いた食パンで酵素を使ったかどうかは、原材料名からは読めません。読めるのは、書く義務のある添加物がそこに1つもなかった、というところまでです。

ミックス粉は、書かれる添加物と書かれない添加物が同じ袋に入りやすい商品でもあります。ふくらし粉の中身が表示に出ない話は、ホットケーキミックスの膨張剤を追った記事で扱いました。

よくある質問

Q
「酵素」と書いてある商品には、どんな酵素が入っていますか?
A

表示からは分かりません。一括名なので、物質名を書かなくてよいことになっています。範囲に入るのは、指定添加物のアスパラギナーゼとプシコースエピメラーゼ、それに既存添加物名簿の68品目で、合わせて70品目です。知りたいときは、袋に書かれた表示責任者に問い合わせる方法があります。

Q
原材料名に「酵素」がなければ、酵素は使われていないのですか?
A

そうとは限りません。一括名「酵素」の定義は、最終食品においても失活せず効果を有するもの、となっています。加熱などで働きを終えた酵素は加工助剤にあたり、表示の対象から外れます。原材料名からは、使っていないのか、使っていても書かなくてよいのかを決められません。

Q
健康食品として売られている酵素と同じものですか?
A

この記事が扱っているのは、食品表示基準の別表第七にある添加物としての「酵素」だけです。健康食品の飲みものやサプリメントは決まりが別なので、ここでは扱いません。

Q
酵素は、ほかの一括名と何が違うのですか?
A

定義の書き方が違います。消費者庁の通知にある14項目のうち、できあがった食品での状態を条件にしているのは酵素だけでした。残る13項目は、何のために使うかだけを書いています。

まとめ:「酵素」の2文字は、働きが残っているという印

銀色の金属の面に灰色の丸い石の板が1枚だけ置かれる

この記事の答えは3つです。

  • 「酵素」は食品表示基準の別表第七にある14の一括名の1つで、物質名の代わりに2文字で書いてよい
  • 消費者庁の通知の定義は「最終食品においても失活せず,効果を有する」。14項目でこの条件が付いているのは酵素だけで、範囲は指定添加物2品目と既存添加物68品目の合わせて70品目
  • ミックス粉11商品では3商品に「酵素」があり、食パンを写した記事2本ではどの商品にも出てこなかった

働きを終えた酵素は加工助剤にあたり、表示の対象から外れます。だから「酵素」の2文字は、使ったかどうかの目印ではなく、袋の中でまだ働いているかどうかの目印として読むのが正確です。

明日やることは1つ。パン用のミックス粉を買っているなら、袋を裏返してスラッシュより後ろを見てください。そこに「酵素」があれば、焼く前の粉の中でまだ働きを持っている酵素です。書いてある商品と書いていない商品を1つずつ見比べるだけで、この2文字の意味が変わって見えます。

書く義務のある添加物が1つもない市販品を、7つの売り場で拾ってきた結果はスーパーで無添加が買えるかを確かめた記事に載せました。

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