ラベルさん先に結論です。pH調整剤として書ける添加物は35品目。保存料の例として挙がっている21品目とは、1品目も重なりませんでした。同じ名前が両方に載っている、ということが起きていません。
書き方の決まりも2つで違いました。保存料は物質名と用途名を並べて書く義務があり、pH調整剤は中身を書かずに5文字で済みます。この記事では、その仕組みを消費者庁と法令の原文で確かめたうえで、市販17商品の原材料名を写して並べました。安全性の評価はしません。扱うのは表示の決まりだけです。数字はすべて2026年9月5日に各社公式サイトで確認しました。
「保存料の代わりにpH調整剤」と言われるようになった理由

この言われ方の出どころは、行政の文書の中にあります。消費者庁が令和4年3月30日に出した「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」です。「無添加」「不使用」と書くときに気をつける形を10の類型に分けたもので、その4番目にこう書かれています。
類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
この類型は、「〇〇無添加」、「〇〇不使用」と表示しながら、〇〇と同一機能、類似機能を有する他の食品添加物を使用している食品への表示をいう。
例1:日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示出典:消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」令和4年3月30日(2026年9月5日確認)
保存料以外の添加物で日持ちを延ばす作り方があること自体は、この文書が前提にしています。「保存料不使用」とだけ大きく書いて、そこに触れないでいると誤認のおそれがある、という注意です。
ただしこの10類型の中に、pH調整剤という言葉は一度も出てきません。ガイドライン全文を通しても、具体的な添加物の名前は1つも挙げられていません。「保存料以外の食品添加物」としか書かれていない。だから「その保存料以外の添加物とはpH調整剤である」と読むのは、文書を1歩越えた読み方になります。
では、pH調整剤という5文字には何が入るのか。ここは原文に全部書いてあります。
pH調整剤に入るのは35品目。保存料の21品目と1品目も重ならない

消費者庁の通知と法令の原文から、pH調整剤と保存料それぞれに入る名前を写して並べました。品目の数は35と21です。突き合わせた結果を先に書くと、同じ名前は1つも見つかりませんでした。
pH調整剤は、中身を書かずに済ませられる名前
出どころは食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)の別表第七です。第三条に関係する表で、その上欄に「水素イオン濃度調整剤」、下欄に「水素イオン濃度調整剤又はpH調整剤」と書かれています。上欄のものとして使った添加物は、下欄の表示に代えることができます。つまり中身の物質名を書かずに、5文字だけで済ませられます。この一覧に載っている名前は14あり、香料や調味料も同じ仲間です。この書き方については香料の2文字の後ろに何があるかを追った記事で扱いました。
そのpH調整剤の定義は、消費者庁通知「食品表示基準について」の別添 添加物1-4に書かれています。13番目の項目です。
13 水素イオン濃度調整剤
(1)定 義 食品を適切なpH領域に保つ目的で使用される添加物及びその製剤。ただし,中華麺類にかんすいの目的で使用される場合を除く。
(2)一括名 水素イオン濃度調整剤又はpH調整剤出典:消費者庁「食品表示基準について(別添 添加物関係)」別添 添加物1-4(2026年9月5日確認)
定義に書いてあるのは「適切なpH領域に保つ」までです。日持ちにも保存にも触れていません。そして同じ項目の(3)に、この名前で書ける添加物が全部並んでいます。
アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、炭酸カリウム(無水)、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸カリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、ピロリン酸二水素二ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム
出典:同上(別添 添加物1-4「13 水素イオン濃度調整剤」の添加物の範囲)
全部で35品目。これに加えて、既存添加物名簿のうち用途が「酸味料」とされている添加物も入ります。
保存料は、物質名と用途名の両方を書く義務がある
保存料は別の表に載っています。同じ食品表示基準の別表第六です。この表に名前のある用途で使ったときは、物質名だけの印刷では足りません。用途も並べて書く義務があります。「保存料(ソルビン酸K)」の形です。別表第六に並ぶ用途は8つで、保存料はその1つ。宅配弁当9社の表示で保存料がどう出てきたかは宅配弁当9社で保存料の表記があった数を確かめた記事にまとめてあります。
その保存料として使われる添加物の例が、同じ通知の別添 添加物1-3に挙がっています。
安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ナイシン、ナタマイシン、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム
出典:消費者庁「食品表示基準について(別添 添加物関係)」別添 添加物1-3「規則別表第1に掲げる添加物のうち用途名併記を要するものの例示」(2026年9月5日確認)
21品目です。この一覧は「例示」なので、しらこたん白のように別の名簿に載っている保存料はここに出てきません。それでも、2つの一覧を1行ずつ突き合わせると、同じ名前は1つもありませんでした。安息香酸もソルビン酸もパラベン類も、35品目の中にはない。逆にクエン酸や乳酸や炭酸水素ナトリウムが、保存料の21品目に混ざっていることもない。

酸味料の24品目は、35品目の中にそのまま入っていた

別表第七には、pH調整剤のほかに酸味料も載っています。この2つに入る添加物を同じやり方で突き合わせたところ、酸味料の24品目は全部がpH調整剤の35品目に含まれていました。同じ名前が両方に載っている、という関係です。
ここで手がかりになるのが、通知の書き出しです。(3)の一文は、どちらもこう始まります。
(3)添加物の範囲 以下の添加物を水素イオン濃度調整剤としての目的で使用する場合
(3)添加物の範囲 以下の添加物を酸味料としての目的で使用する場合出典:消費者庁「食品表示基準について(別添 添加物関係)」別添 添加物1-4(2026年9月5日確認)
「その目的で使用する場合」と書いてあります。名前を決めているのは、入れた物質ではなく、何のために入れたかです。同じクエン酸でも、酸味を付けるために入れれば酸味料、pHを保つために入れればpH調整剤と書ける。
この差は、売り場の商品にそのまま出ていました。イオンのトップバリュ うどん[ゆで](関東中京東海)の表示は、原材料名が小麦粉と食塩、添加物がpH調整剤です。東洋水産の玉うどん 3食入(北海道向)は「小麦粉(国内製造)、食塩/酸味料」。書いてある原材料は小麦粉と食塩の2つで同じなのに、後ろの一括名だけが別になっています。
pH調整剤にしかない11品目も見ておきます。炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム(無水)、乳酸カリウム、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム。炭酸塩とリン酸塩が並んでいます。酸味を付けるための一覧には入らず、pHを保つための一覧にだけ入る名前です。
市販17商品の原材料名を並べた

ゆで麺・包装米飯・惣菜・水産加工・飲料の17商品について、原材料名をメーカーとイオン、日本生協連の公式ページから写しました。pH調整剤の表示があるかどうかと、公式ページが中身の物質名まで書いているかで並べます。
| 商品 | 会社 | 種類 | pH調整剤の表示 | 公式が書いた中身 |
|---|---|---|---|---|
| うどん[ゆで](関東中京東海) | トップバリュ | ゆで麺 | あり | クエン酸、DL-リンゴ酸 |
| 北海道産小麦使用うどん(北海道) | トップバリュ | ゆで麺 | あり | フマル酸 |
| きしめん | トップバリュ | ゆで麺 | あり | DL-リンゴ酸、クエン酸 |
| 麺の達人 もっちり生ラーメン 4人前 | 日清食品 | 生麺 | あり | 書かれていない |
| 日清のどん兵衛 焼うどん | 日清食品 | カップ麺 | あり | 書かれていない |
| 麦ごはん | トップバリュ | 包装米飯 | あり | グルコノデルタラクトン |
| 北海道産もち米・小豆使用赤飯3個パック | トップバリュ | 包装米飯 | あり | グルコノデルタラクトン |
| 国産野菜のポテトサラダ 170g | コープ | 惣菜 | あり | 酢酸Na等 |
| 北海道産男爵のポテトサラダ 180g | コープ | 惣菜 | あり | 酢酸Na等 |
| おうちで楽しむCafeごはん ガパオ | トップバリュ | 惣菜 | あり | 酢酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、氷酢酸、グルコノデルタラクトン |
| 無着色減塩たらこ 60g | コープ | 水産加工 | あり | フマル酸Na |
| コーヒーゼリー(付属のフレッシュ) | コープ | デザート | あり | リン酸Na等 |
| オーツミルク | トップバリュ | 飲料 | あり | 炭酸ガス、苛性ソーダ |
| マルちゃん焼そば 3人前 | 東洋水産 | 蒸し麺 | なし | 保存料(しらこたん白)を表示 |
| 焼そば 135g×3食入 | コープ | 蒸し麺 | なし | 保存料(しらこたん白)を表示 |
| 玉うどん 3食入(北海道向) | 東洋水産 | ゆで麺 | なし | 酸味料と表示 |
| 割っておいしいSoda | トップバリュ | 炭酸水 | なし | 炭酸水素Na、クエン酸Na、リン酸K、リン酸Naと表示 |
17商品のうちpH調整剤の表示があったのは13商品。そのうち11商品は、中身の物質名まで公式ページに出ていました。
一括名の中身まで書いていたのは、イオンと生協の11商品

イオンと日本生協連は、商品ページの下に「添加物用途」と「物質名」を並べた表を置いています。袋には5文字しか印刷されていない一括名の中身が、ここで読めます。13商品のうち11商品でこの表がありました。
そこに出てきた名前は10です(酢酸ナトリウムと酢酸Naのように、書き方が違うだけで同じものは1つにまとめています)。うち8つ――クエン酸、DL-リンゴ酸、フマル酸、フマル酸Na、グルコノデルタラクトン、酢酸Na、氷酢酸、リン酸Na――は、通知の35品目に同じ名前か、その簡略名として載っていました。保存料の21品目に出てくる名前は、11商品のどこにも現れませんでした。
残る2つは確かめられていません。トップバリュ オーツミルクの表に書かれた「炭酸ガス」と「苛性ソーダ」です。この2語は業界の呼び名で、35品目の一覧に同じ書き方がありません。どの品目に当たるのかは、公式ページの記載だけでは決められませんでした。
同じ酢酸Naが、2か所に書かれている商品があった
おもしろい書かれ方をしていたのが、コープの国産野菜のポテトサラダ 170gと北海道産男爵のポテトサラダ 180gです。原材料名のスラッシュより後ろは、こう並んでいます。
/酢酸Na、pH調整剤、調味料(アミノ酸等)、ショ糖脂肪酸エステル、香辛料抽出物
出典:日本生活協同組合連合会「コープ商品情報検索」(2026年9月5日確認)
酢酸Naが単独で書かれ、その次にpH調整剤が続く形です。そして同じページの食品添加物の欄には「pH調整剤 酢酸Na等」と出ていました。同じ酢酸Naが、物質名としても、一括名の中身としても書かれているということです。通知が「その目的で使用する場合」と書いている以上、目的が別なら別々に書かれます。1つの商品の中で、名前の付け方が2通りに分かれた形です。
日清食品の2商品には、この表がありません。麺の達人 もっちり生ラーメン 4人前の原材料名は「小麦粉(国内製造)、食塩、卵粉、水あめ、小麦たん白/酒精、加工でん粉、pH調整剤、かんすい、焼成Ca、トレハロース、リン酸Ca、酵素、クチナシ色素」。pH調整剤とかんすいと酵素が並んでいて、この3つはどれも中身が書かれない名前です。何が何品目入っているかは、袋からもウェブからも分かりませんでした。
pH調整剤が入っている商品ほど日持ちが長い、という順番ではなかった

17商品のうち、期限の日数を公式ページに書いていたのは3商品でした。pH調整剤の有無と日数を突き合わせると、きれいな順番になりません。
| 商品 | pH調整剤の表示 | 公式が書いた期限 |
|---|---|---|
| トップバリュ うどん[ゆで](関東中京東海) | あり | 消費期限は製造日より6日後 |
| コープ 焼そば 135g×3食入 | なし(保存料の表示あり) | 賞味期間15日 |
| トップバリュ オーツミルク | あり | 賞味期限は製造日より365日後 |
pH調整剤の表示がある2商品が、6日と365日で両端に来ました。あいだにいるのが、pH調整剤ではなく保存料を表示している焼そばの15日です。日持ちの長さを決めているのは、この5文字があるかどうかではありません。容器も温度帯も加熱の仕方も違うので、当然といえば当然です。
もう1つ。一括名は、中に何品目入っているかも表示に出しません。トップバリュのガパオは公式ページによると4品目、麦ごはんは1品目。それでも袋の印刷はどちらも「pH調整剤」の5文字だけです。品目の数を袋から数えることはできません。
表示にはもう1つ穴があります。加工助剤とキャリーオーバーに当たる添加物は、そもそも書かなくてよい決まりです。この2つの免除については条文の「除く」を原文で読んだ記事で扱いました。ここで並べているのは、あくまで書かれていたものだけです。安全性の評価はしていません。
袋で分かることと、会社のウェブでしか分からないこと

見る場所を2つに分けます。
- スラッシュ(/)より後ろに「pH調整剤」があるか。あっても、中身の名前も品目の数も、そこには出ません
- その商品の会社が、ウェブで中身を出しているか。イオンと日本生協連は商品ページに一覧を置いていました。中身まで知りたいなら、袋ではなくこちらを見ます
今回、原材料名にたどり着けなかった売り場もあります。コンビニのおにぎりと弁当です。セブン‐イレブンの公式ページで商品を1つずつ開きましたが、出ていたのはアレルギー物質と栄養成分で、原材料名の欄はありませんでした(2026年9月5日確認)。この売り場については、容器の一括表示を店頭で読むことになります。
スーパーで表示の短い商品がどこに置いてあるかは添加物0品目の商品を7つの売り場から拾い出した記事にまとめました。袋に「無添加」とあってもどこまでを指すかは決まっていないので、その線引きは無添加とは?で整理しています。
それでも、袋を1つずつ裏返す時間は毎日はとれません。原材料名を注文する前に読める形にしてある惣菜を選ぶ、という手もあります。届く前に表示が出ていれば、売り場で立ち止まる回数が減ります。
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よくある質問
- QpH調整剤は保存料の代わりに使われているのですか?
- A
その商品に何のために入れたかは、原材料名からは分かりません。制度の上では別の枠になっていて、消費者庁の通知に挙がっている名前も、pH調整剤の35品目と保存料の例示21品目で1品目も重なりませんでした。保存料は物質名と用途名を並べて書く義務があり、pH調整剤は5文字だけで済ませられます。
- Q「pH調整剤」の5文字には、何品目入っていますか?
- A
袋の表示からは分かりません。公式ページに中身が出ていた11商品では1品目から4品目でした。トップバリュのガパオは4品目、麦ごはんは1品目で、袋の印刷はどちらも同じ5文字です。
- QpH調整剤と酸味料は何が違うのですか?
- A
消費者庁の通知では、酸味料の24品目がpH調整剤の35品目にすべて含まれています。同じクエン酸でも、酸味を付けるために使えば酸味料、pHを保つために使えばpH調整剤と書けます。東洋水産の玉うどんは酸味料、トップバリュのゆでうどんはpH調整剤で、書かれている原材料は小麦粉と食塩の2つで同じでした。
- Qコンビニのおにぎりや弁当の原材料名は、どこで読めますか?
- A
今回はセブン‐イレブンの公式ページで商品を1つずつ開きましたが、原材料名の欄が見つかりませんでした(2026年9月5日確認)。読めたのはアレルギー物質と栄養成分です。この売り場は、店頭で容器の一括表示を見ることになります。
まとめ:pH調整剤の35品目に、保存料の名前は1つも入っていない

原文を突き合わせて出た答えは1つです。pH調整剤として書ける35品目と、保存料として挙がる21品目は、1品目も重なりませんでした。そして酸味料の24品目は、35品目にそのまま含まれていました。名前を分けているのは物質ではなく、何のために入れたかです。
市販17商品では、pH調整剤の表示があったのが13商品。うち11商品は、イオンと日本生協連が中身の物質名まで公式ページに出していました。そこに保存料の名前は1つも出てきません。ただし、何のために入れたかは表示に書かれないので、ある商品で日持ちのために働いているかどうかは、原材料名からは決まりません。
明日やることは1つ。ゆで麺やポテトサラダの袋を裏返して、スラッシュの後ろに「pH調整剤」があるかを見る。あったら、その会社のウェブに中身の一覧が出ていないかを見る。イオンと生協は出していました。
今回pH調整剤が出てきたポテトサラダについては、市販6商品の表示を最後まで読んだ油を減らすと添加物が増えていた記事もあわせてどうぞ。
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